要素技術の推移から見た電卓@ 素子A 表示技術B 印字技術C 入力方式
D 電源E 機能F 薄さプロトタイプモデル

D 電源

AC電源
充電池 SOBAX ICC-500(ソニー) (1967) (外付け)
ICC-82D (三洋) (1970)
ポケトロニク(キヤノン) (1970)
LE-10(キヤノン) (1971)
QT-8B (シャープ) (1970)
EL-8(シャープ) (1971)
乾電池 LE-120A (ビジコン) (1971)
カシオミニ(カシオ)(1972)
El-805(シャープ) (1973)
ボタン電池Executive (Sinclair) (1972)
太陽電池EL-8026 (シャープ) (1976)
CX-1 (amorton) (Sanyo) (1980)
太陽電池式電卓

充電池


バッテリーパックを装着したところ。

SOBAX ICC-500 (ソニー)

1967年6月に発売されたソニーの最初の電卓。当時の価格 260,000円。
発売当時世界で一番小さくかつ軽い電卓だった。
電灯線はもちろん、車の中では自動車電池で使え、専用電池をつければ、飛行機の中でも、新幹線の中でも使えた。
専用電池は充電式で、1回の充電で連続4時間使用できた。

262(W)×138(H)×390(D)mm。
6.3kg。


ICC-82D (三洋)

1970年5月に発売された。充電池を内蔵した携帯サイズの電卓としては世界最初の電卓。(同年10月にはキャノンからポケトロニクが発売される。)
内部には米国のゼネラル・インスツルメンツ(GI)社と共同開発した4つのLSIを使用している。8桁表示ながら16桁までの計算が可能 。持ち運びに便利な箱がついている。価格は115,000円。
海外ではDictaphone 社からもOEMで販売された。



Pocketronic (キヤノン)

1970年に発売された世界で最初の携帯型電卓の1つ。
テキサスインスツルメント社が開発したポータブル電卓カルテクの技術をキヤノンが購入し、改良を加え発売したもの。
蛍光管は搭載しておらず、TI社の特許であるソリッドステートサーマルプリンタ方式を採用している。携帯型にもかかわらず12桁の定数計算が可能だった。MOS・LSI を3個使用しており、内蔵NiCd電池により連続3時間の使用が可能だった。
日本製。
101(W)×208(D)×49(H)mm。本体820g。テープ 80g。
本体 87,000円。バッテリーチャージャー8,500円。サーマルプリントテープ(80m)350円。





充電しているところ。

LE-10 (キヤノン)

1971年に発売されたキヤノンの最も初期の充電式ポケット電卓。
Pocketronicと異なりLED表示を採用している。。
頭部には充電池が4本内臓されており、充電はクレードル上で行う。
左上にはバッテリーメーターがついている。
非常に重厚な作りでずっしりとした重量感がある。
当時の価格 58,000円。



QT-8B (シャープ)

 ポケトロニクと同じ1970年にシャープより発売された初期のポータブル電卓。
 ベースは前年に発売された世界最初のLSI電卓QT-8D。
 シャープはこのQT-8Dに充電池を搭載しポータブル電卓として販売した。ただポータブルとはいってもデスクトップ並みの大きさがあった。
 翌年シャープは小型電卓EL-8を販売する。
 LSI4個、IC2個使用。幅135(W)×247(D)×72(H)mm。1.6kg。
117,000円。


充電器を離したところ。

EL-8 (シャープ)

1971年1月に発売された小型電卓。
シャープからは携帯型電卓としてQT-8B が既に発売されていたが、これはデスクトップ電卓QT-8D に充電池を搭載したものであり、携帯型コードレスのデスクトップ電卓といった方が適切であった。
 これに対し、EL-8 は当初から小型化を意識して設計されたもので全体に小ぶりに作られている。
当時の価格 84,800円。

この他充電池が搭載されていないACアダプタ専用 EL-8Aが発売された。



乾電池

Busicom LE-120A (ビジコン)

 モステック社とビジコン社が共同開発した世界で最初のワンチップ電卓用チップ MK6010 を搭載した世界で最初のポケットサイズ電卓である。
 ビジコン社は電卓のポケットサイズ化を実現するためワンチップLSIの開発が不可欠と考え、当時14人のベンチャー企業であるモステック社と共同で研究開発を行った。当時モステック社は小さいながらもイオン注入法という最新技術を採用し大きな成果をあげていた。ビジコン社は、演算ロジック部分の開発を担当し、当時既にヒット商品となっていた「ビジコン120」という計算機のロジックをもとに開発を行った。こうしてできた演算ロジックの回路のワンチップ化をモステック社が担当した。
 LE-120Aは小さいだけでなく、2つの先進的特徴を持っていた。一つは発光ダイオードの使用であり、もう一つは単3電池の使用である。
 発光ダイオードによる表示装置は、モンサント社により実用化されたもので、世界最初の実用発光ダイオードであった。これをワンチップLSIと組み合わせることによって乾電池駆動の実用ポケット電卓が完成し、「手のひらコンピュータ」というキャッチフレーズで売り出された。


電源 単三4本。 サイズ 64(W)×123(D)×22(H)mm。
価格 89,800円。





Mini (カシオ)

1972年8月に発売された。
12,800円という低価格で、電卓を個人で使うものとした「大衆電卓」の走りともいうべき電卓。
パーソナルユースをコンセプトに開発されたカシオ・ミニは大ヒットし、出荷台数は発売後約10か月で100万台に達した。
また、海外のSperry Remington Rand 社やUnisonic 社へもOEMで供給された。





EL-805 (シャープ)

1973年6月に発売された世界初のCOS-LCD電卓。
発売価格は26,800円とライバルのカシオ・ミニ(12,800円)より高かったものの、単三一本で100時間も連続使用できたことから価格が高いにもかかわらずヒットした。
この電卓をきっかけに電卓の表示機能は蛍光管から液晶に代わった。
またこの電卓をきっかけに電卓戦争の中心は価格から薄さに移行する。

 2005年にCS-10A、CS-16A及びQT-8Dとともに世界的な電気・電子学会であるIEEEより、権威ある「IEEE マイルストーン」に認定された。
電卓の発達史上最も重要な電卓の一つである。

20(H)×78m(W)×118(D)mm。 210g(乾電池を含む)。

COS基盤





ボタン電池

Executive (Sinclair)

 Executive は1972年8月に英国シンクレア社が発売した最初のポケット電卓である。
 世界で最初のポケット電卓は、1971年1月に発売されたBusicom LE-120A であるが、Executive は厚さが1cmと極めて薄い点に特徴がある。
 両者を比較した場合、ディスプレイ、キーボード、電源などの面ではLE-120Aの方が技術的に優れており、製品の信頼性、安定性、使いよさの面でもLE-120Aの方が上回っている。しかし、Executive は非常に薄く、かつ軽く、背広のの胸ポケットに入れても全く違和感を感じないといった特徴がある。その意味でExecutive はポケットに常時入れ、携帯する「手帳型電卓(Wallet type calculator)」の走りとみたほうがよいかもしれない。
 デザイン的にも優れており、数々のデザイン関連の賞を受賞するとともにMOMAのパーマネントコレクションにも選定されている。
 当時の価格は79.95ポンドと非常に高価ではあったが爆発的に売れ、Sinclair卿 は莫大な利益を手にしたといわれる。

ボタン電池の挿入部分。


太陽電池

太陽電池式電卓

EL-8026 (シャープ)

1976年に発売された世界で最初の太陽電池式電卓。受光部は電卓の裏側にある。
充電式のボタン電池を内蔵しており、暗いところでも使用ができた。サイズ 66(W)×109(D)×9.5(H)mm。 65g。
当時の価格2万4800円。



2010年シャープの太陽電池の技術が世界最大の技術者団体「電気電子学会(IEEE)から、社会や産業に貢献した歴史的な業績をたたえる「マイルストーン」に認定された。受賞の対象は1959年から83年の太陽電池事業。
シャープは1959年から太陽電池の開発を始め、63年にいち早く量産化に成功するなど、商業化と産業化に貢献したことが評価された。創業者の早川徳次氏は「太陽の熱や光を有効利用できないか」と着目。灯台や人工衛星に搭載され、過酷な環境で実績を積み重ねた。EL-8026はシャープの太陽電池開発の中で1976年に生まれた世界で最初の太陽電池付き電卓である。

<シャープの太陽電池の商業化および産業化の歴史 1959年〜1983年>
1959年 太陽電池の研究開発に着手
1963年 単結晶太陽電池の量産化に成功
1966年 長崎県尾上島の灯台に当時世界最大225Wの太陽電池モジュールを設置
1967年 宇宙用太陽電池の開発に着手
1976年 実用衛星「うめ」へ搭載
1976年 世界で最初の太陽電池付き電卓EL-8026を発売
1983年 アモルファス太陽電池の開発に着手

CX-1 (amorton) (Sanyo)

1980年に発売された世界で最初のアモルトン内蔵太陽電池式電卓。
アモルファスシリコンは現在各種の半導体に使われている単結晶シリコンに比べ、大幅なコストダウンが図れるところから活発な開発競争が繰り広げられた。
この電卓は前年に世界で最初にアモルファス太陽電池を開発した三洋電機が世界に先駆けて実用化に踏み切ったもの。