ビジコン ポケット電卓

ビジコン社は、1957年に昌和商店及び日本計算器から計算機の販売部門が分離されてできた会社である。(当時の社名はは日本計算器販売(株)。1970年にビジコン(株)に社名変更する。)。
同社は,ビジコン161を発売し、当時の電卓の市場価格を一気に15万円も低下させ旋風を起こすとともに、INTEL社とマイクロコンピュータの共同開発を行い、19713月に世界最初のマイクロプロセッサ4004を完成するなど電卓、コンピュータの発達史上様々な重要な役割を演じた。
 ポケット電卓に関しては1970年からモステック社との間でもワンチップ電卓用LSIの開発を進め、そのLSIを用い、1971年世界で最初にポケット電卓「ビジコンLE−120A」を発売することに成功する。
 同社の電卓は今では非常に希少だが、いずれも非常に洗練された魅力的な電卓が多い。

LE-120A発売当時の各社の電卓のスペック

LE-120A (Busicom)

EL-8 (Sharp)

Pocketronic (Canon)

Sacom Mini (Sanyo)

Display type

12 digits
LED

8 degits
degitron

12 degits
Sermal print

8degits (16 degits)
Nixie tube

Chip

MOS-LSI × 1

LSI × 4

LSI × 3

LSI × 4

Battery type

DC
4×AA (10 hours)

AC & DC
Rechargeable (3 hours)

AC & DC
Rechargeable (3 hours)

AC & DC
Rechargeable (10 hours)

Power

DC:036W

AC:5.5W DC:1.1W

DC:1W

DC:3W

Size (W×H×D)
Weight

64×22×123
300g(with 2 batteries)

102×70×164
720g

101×49×208
820g

135×54×222
1000g

Price

\89,800

\84,800

\87,000

\89,500

日本テレビ 「ザ・ワイド」 (2004621日放送)に当博物館のポケット電卓Busicom LE-120A が取り上げられました。




 


 

 

Photo courtesy : Mr.Ignacio Sanchez

<カタログ>



ビジコン デスクトップ電卓
ビジコン社の歴史
Intel 4004

開発過程の電卓 (塚本コレクション)

 

Photo courtesy : Mr.Ignacio Sanchez

 



1971625日 日本経済新聞広告。
実際に発売されたのとは違うデザインが採用されている。


1971
820日 日本経済新聞広告。

Busicom LE-120A

(世界初のポケット電卓)
Busicom LE-120A
は、モステック社とビジコン社が共同開発した世界で最初のワンチップ電卓用チップ MK6010 を搭載した世界で最初のポケットサイズ電卓である。
ビジコン社は電卓のポケットサイズ化を実現するためワンチップLSIの開発が不可欠と考え、当時14人のベンチャー企業であるモステック社と共同で研究開発を行った。当時モステック社は小さいながらもイオン注入法という最新技術を採用し大きな成果をあげていた。ビジコン社は、演算ロジック部分の開発を担当し、当時既にヒット商品となっていた「ビジコン120」という計算機のロジックをもとに開発を行った。こうしてできた演算ロジックの回路のワンチップ化をモステック社が担当した。

LE-120A
は小さいだけでなく、2つの先進的特徴を持っていた。一つは発光ダイオードの使用であり、もう一つは単3電池の使用である。

発光ダイオードによる表示装置は、モンサント社により実用化されたもので、世界最初の実用発光ダイオードであった。これをワンチップLSIと組み合わせることによって乾電池駆動の実用ポケット電卓が完成し、「手のひらコンピュータ」というキャッチフレーズで売り出された。

1971
1月に発表され6月に発売されたが大きな反響を呼び89,800円と高価だったにもかかわらず(当時の大卒の初任給は46,500円)国内外とも爆発的に売れた。噂では当時イランのパーレビ国王やギリシャの大船主のオナシスもLE-120Aを大量に購入したといわれていた、何かのセレモニーの参加者に配る記念品として購入されたのかもしれない。

LE-120A
は、電卓の小型化の観点からキーの小型化にも力を入れた。当時の産業解剖学の観点から様々な実験を行い、電卓操作に影響が生じない小型のキーを開発した。その点でLE-120A はキーについても先進的な電卓といえた。しかしこのボタンは旧型の大きな電卓に慣れている人々には非常に小さく感じられた。このためビジコン社はボタンを押すためのペンをつけて販売した。

電源 単三4本。 サイズ 64mm(W)-123mm(D)-22mm(H)。価格 89,800円。

発売当初 デザインは若干異なっている


当時話題となった小林亜星を使った広告


スペインでの広告 裏はスペイン語で書かれている


 



LE-120A のキーボードの記事

Photo courtesy : Mr.T.Yoshida

 

LE-120A が発売された時の記事

 











Busicom LE-120GB

「純金てのひらこんぴゅうたぁ」。LE-120A に金メッキを施したもの。スペックはLE-120Aと同じだが重量(電池共)は14g重くなっている。
当時のパンフレットをみると、「ハンディゴールド」の他「ハンディインペリアル」というタイプがあるとのことだが詳細は不明。
LE-120G
の当時の価格は38万円とLE-120A89,800円と比べても極めて高価。過去販売された電卓の中で最も高価な電卓といってよい。おそらく実用というより、ステータスシンボルとして購入されたのだろう。
こうした機種を発売した背景には、単に利益を上げるだけではなく、市場に高価な機種を投入することで市場における電卓価格の急落を抑えようとの経営戦略があった。

 


 

リニューアル前のLE-120GB

 

LE-120A LE-120GB の比較

GBにはストラップが付いていない。

Aはオリジナルのシャープペン、GB Cross のボールペンが付いている。


Owner: Mr.Yoshio Kojima (President of BUSICOM)

小島義雄氏(ビジコン社社長)所有 - ファーストモデル

写真はビジコン社の社長の小島さんがお持ちのファーストモデル。シリアルNo.BJ00001。パンフレットにも使われた貴重なものである。

 

Owner: Mr.Masaru Tsukamoto

塚本勝氏所有 - 開発過程の電卓 (塚本コレクション)

ビジコン社の電卓開発の担当者であった塚本勝氏がお持ちだったもの。LE-120Aを金色に着色したもの。
下のパンフレットとみると、驚いたことに左側のパンフレットに載っている電卓は小島さんのものなのに対し、右の2つのパンフレットに載っているの電卓は塚本さんのものであると考えられる。おそらく左の2つのパンフレットはLE-120GB開発過程で製作されたもので、実際にはこうした機種は販売されなかったと考えられる。

開発過程の電卓 (塚本コレクション)



Photo courtesy : Busicom Corp

Busicom LC-120

19711月に発表された世界で最初のポケット型液晶電卓。
ビジコン社はこの電卓を9万円前後で8月に発売するとしたが、当時の液晶の安定性が十分でなかったことから、実際には販売されなかった。


Busicom LE-120S

LE-120A発売の翌年、1972年発売された。スペックはLE-120Aと基本的に同じだが、ボディはLE-120Aが亜鉛ダイカスト製なのに対し、LE-120Sはプラスチック製、電池ケースはLE-120Aがケースごと着脱できる機構なのに対しLE-120Sでは裏蓋をはずして詰め替える現在一般的な方式に変更されている。価格はLE-120A89,800円なのに対し、LE-120S64,800円だった。


Mini Computer (Quelle) (Busicom LE-120S) (No.1)

"Privileg" は、ヨーロッパに拠点を置く商社である Quelle International社のブランド名。
ビジコン社は主として米国ではNCR、英国ではBroughtons、ドイツではQuelle OEMで電卓を供給した。Mini ComputerLE-120Aと異なり表示桁数を12桁から8桁に減らしりボディもプラスチック製となっている。
このMIni Computer は、LE-120Sと同じものと考えられる。

 


Photo courtesy : Mr.Thomas Brockmeier

Mini Computer (AGFA-GEVEAERT) (Busicom LE-120S)

同じくドイツで発売されたLE-120SOEMバージョン。
非常に珍しいもの。

 


 

 

Photo courtesy : Mr.Ignacio Sanchez

 

LE-100A

LE-100A10桁表示の計算機。12桁表示のLE-120Aの後継機にあたる。モステックではなくテキサスインスツルメント社のLSIチップを使っている。発光ダイオード表示。
電源 単三4 (10時間使用可)。 サイズ 66mm(W)-123mm(D)-28mm(H)。重量 200g(電池込み)。 価格 39,800円。


 

 

 


 

Photo courtesy : Mr.Ignacio Sanchez

 


LE-80A

19725月に発売された世界で最初の小型(タバコケースサイズ)電卓。
電卓本体の大きさはタバコケースより一回り小さい。
1971
1月に世界で最初のポケット電卓を発売したビジコン社は常時背広のポケットに入れ、違和感なく携帯できる大きさとしてタバコケースサイズが望ましいと考え、この電卓を開発、発売した。
表示は発光ダイオード8桁。チップはTI社製。

高級革ケース付(58,000円)と内側にBUSICOMの刻印の入った高級オーストリッチ革ケース付(64,800円)があった。当時電卓がいかに高級で大事にされていたかがわかる。

5電池4本使用。56(W)×81(D)×21(H)mm100g(電池込み)。

 


BUSICOMの刻印の入った
オーストリッチ革ケース

Serial No. 35SB100543

474月の字が見える。



LE-80B

LE-80Aの後継機。デザインは異なるもののスペックはLE-80Aと全く同じ。

 



Photo courtesy : Mr.Frank Boehm

Micro Computer (Privileg)

Privileg 社へのOEM
キーのデザインはLE-80B だがアルミのパネルが使われているところは LE-80A と似ている。


Mini Computer (Quelle) (Busicom LE-80S) (No.2)

Busicom LE-80Sのドイツ Quelle社へのOEM
LE-80AS
と似ているが、チップはLE-80ASTI社のチップを使い浮動小数点方式になっているのに対し、こちらはMostec社のチップを使用し、固定小数点方式を採用している。このため左上のスライドスイッチが異なっている。


Courtesy of Mr.Joerg Woerner


LE-80AS

19734月発売されたキーボタンをより大きく押しやすくしたタイプ。
チップはTI社のチップを使っており、浮動小数点方式になっている。
27,800
円。


 


60-DA

19729月第45回大阪ビジネスショーで発表発売された。
6
桁表示だがダブルレングス方式により12桁計算が可能。
LSI
ワンチップマシン(モスティック社製)。
単三4本 またはACアダプター使用。

105(W)
×175(D)×50(H)mm600g12,800円。


 

CPU

60-DA

Mini Computer (Privileg)


 

 

Photo courtesy : Mr.Ignacio Sanchez

60-DB

19734月に発売された60-DAの後継機。
60-DA
と同じスペックだがコンパクト化され重量は600gから300gへと軽くなった。
完全ダブルレングス(倍長)方式により12桁までの計算が可能。
表示は発光ダイオード。LSIワンチップマシン(モスティック社製)。
乾電池、ACアダプタの2電源方式。

86(W)
×152(D)×42(H)mm310g17,800円(別売専用アダプター1,500円)。


 

3桁目のセグメントが欠けている。↑

 

小島義雄氏所有の 60-DB





MODEL 3260 (Ruler calc)

ビジコン社のカード型ルーラー電卓。右下の回転ダイヤルを紙面にあて前に動かすと長さが表示される。
ビジコン社は19743月に倒産し、その後会社更生法の適用を受け事業を再開するが、再生後の製品と考えられる。


118B (Broughtons)

ビジコン社の英国の代理店であるブロートン社の販売した電卓。ブロートン社はビジコン社の電卓を輸入販売していたが、ビジコン社が倒産すると英国における"Busicom"の商標を買い取り東和や信和ディジタルなど日本の他のメーカーが製造した電卓をBusicomの名前で販売した。
118B
の内部をみると、非常にシンプルな構造になっておりシャープ製のCPUが使われている。(CPUには"LI2013 SHARP 8C2 007"との記述がある。)3電池2本またはACアダプターを使用。日本製。

英国における総代理店
Broughtons of Bristol.


Busicom 電卓 (塚本コレクション)

ビジコン社の電卓開発の担当者であった塚本勝氏の所蔵品。全て開発段階の試作品で特にEXEC 120-DNは市販されなかった希少な電卓である。(→ 塚本勝氏のホームページ


プロトタイプモデル
History of Busicom Corp



ビジコン社のポケットタイプ電卓

LE-120A

1971年1月

\89,800

米国MOSTEK社と協同開発した世界で最初のワンチップLSIを搭載した世界最初、世界最小の12桁ポッケト計算機(ニューヨークと東京で同時発売)。

LC-120

1971年1月

世界で最初の液晶タイプ電卓。LE-120Aと同じくニューヨークと東京で同時発表したが発売はしなかった。

LE-120S

1972年2月

\64,800

ビジコンハンディLE-120Aの姉妹機種。ABS樹脂ケースを採用し、“てのひらこんぴゅーたー”として発売。

LE-80A

1972年5月

\58,000

8桁。タバコサイズ(高級オーストリッチ革ケース付\64,800)。

LE-80B

LE-120T

19725

\49,800

世界最初のオーナメントタイプ電卓(三越デパートに供給発売)。斬新な円形デザイン。12桁発光ダイオードディスプレイ。LSIワンチップマシン。

93(直径)×63(高さ)mm300g。単3電池4本使用。49,800円。

60-DA

19729

ダブルレングス方式により12桁計算が可能。
45回大阪ビジネスショーで発表発売。

LE-100A

19729

\39,800

10桁電卓。TI製ワンチップLSI
45回大阪ビジネスショーで発表発売。

LE-80AS

19734

\27,800

キーボタンをより大きく押しやすくしたタイプ。

LE-80FA

60-DB

19734

\17,800

60-DAと同じスペックだがコンパクト化され重量は600gから300gへと軽くなった。

 
 
 

本ページの作成に当たってビジコン社社長の小島義雄氏に様々な資料のご提供や適切なご助言をいただきました。
この場をお借りして厚く御礼申し上げます。


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