ようこそ電卓博物館へ
〜科学技術の歴史を軽視する国は亡びる〜
電卓博物館は昔製造販売された電卓等を収集展示したインターネット上のバーチャル博物館です。展示してあるのは電卓関係約1,700、コンピュータ、その他約150となっています。
この博物館はバーチャルですがバーチャルだけに他のどこの博物館にないサービスが提供できます。すなわち、インターネット環境さえあれば、世界中のどこからでも、また24時間いつでも無料で入館し、見学することができます。また展示品から展示品への移動は必要なく、椅子に座ったまま全ての展示を見ることが可能です。ただバーチャルであることの最大のメリットは運営費用がほとんどかからないことです。
近年、大学の博物館や企業の博物館が次々と閉鎖しています。理由はいろいろあるでしょうが、目先の利益に囚われるあまり、博物館の運営費用に手を付けるようになったことが原因と言えるのではないでしょうか。
博物館の閉鎖により私たちは貴重な産業遺産を直接目にすることができなくなっています。私は、こうした状況は単に懐古趣味で残念ということではなく、日本の将来にとって極めて由々しき事態であると考えています。なぜなら「科学技術の歴史を軽視する国は亡びる」からです。
現在、日本が科学技術で世界にトップに君臨しているのは、それを築き上げた先人たちの不屈の努力があったからです。こうした先人たちの努力を振り返り、その偉業を称えることは、これから新しい技術革新に取り組む人たちに大きな勇気と希望を与えます。また、科学技術の発展を志す若者の増加につながります。
また、科学の歴史は、掘り起し、広く主張しない限り、忘れられてしまい、「なかったこと」になってしまいます。例えばコンピュータの歴史をとってみても、アメリカがコンピュータを作り、そのコンピュータを世界中の多くの国が利用していると単純に考えられていますが、科学史に興味を持った人なら、コンピュータやマイクロチップの開発に日本は独自で様々なチャレンジをし、一部では非常に重要な役割を果たしてきたことを知っています。しかし、こうした技術開発の歴史を掘り起こし、世界に発信していかなければ、いずれこうした事実も忘れ去られ、日本は他の多くの国と同じように、アメリカが開発したコンピュータの技術をただ乗りさせてもらっているということになってしまいます。
過去の歴史上の事実を現在、将来の視点で掘り起し、整理し、発信していくことは国にとって極めて重要な問題です。誤った認識が一般化すると、最終的に国益を大きく損ねることを日本人はしっかりと認識すべきです。博物館はそのための重要な国家戦略としての役割を担っています。巨大な博物館を作り、世界中から貴重な産業遺産を収集しているアメリカと、博物館の運営費に四苦八苦し、次々に博物館を閉鎖している日本、こうした状況は将来大きな禍根を残すといえます。今こそ、博物館の役割を再認識すべきときであるといえます。
電卓博物館は、こうした危機感を持ちつつ、個人としてできるささやかな取り組みとして電卓に関する情報の収集を続けてまいります。
電卓博物館 館長
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