国内のメーカー (2)


    タイガー計算器

    タイガーは機械式計算機で市場をリードした会社である。しかし、日本計算機がビジコン社として電卓分野へ積極的に展開したのに比べ、同社は電卓への移行が遅れた。
    当初は、ANITA,カシオなどが製造したが電卓を販売したりしたが、その後は技術計算用で優れた性能を持つ精工舎・TI・HP などの電卓を販売する一方、タイガーブランドによりOEM 方式を自社の販売網(直販)で販売したりした。

タイガー1213 (タイガー計算器)

1970年2月頃発売された最初のタイガーブランドの電卓。
製造は日通工。

日通工は主として電話器を作る企業だったが、将来デジタル機器分野への参入を視野に、当時、競争が熾烈だった電卓分野にあえて進出した。同社はほどなく電卓分野から撤退することになるが、電卓分野で得た技術力にをもとにPOS分野に参加し、大成功を収めた。

当時の価格は137,000円。
製造は日本通信工業株式会社。


日本経済新聞 1970.2.10.





タイガー1213D (タイガー計算器)

1970年にタイガーから発売された電卓。日本通信工業株式会社(日通工)によるOEM電卓。
1213Dと称し、1213 と外形・機能がほぼ同一。

SSI のロジックによる回路構成、珍しいのは(当時)100・200V 切替がついており、当時輸出も視野に入れていたことがわかる)。

W 245 x H 117 x D 342 o 15φ ニクシイチューブ

1970年11月発売。






寄贈) 工房遊次


Photo courtesy : Mr.Toshiro Hata

タイガー1213E (タイガー計算器)

1971年に発売された電卓。日通工からのOEM で最後の形式。
 W 180 x H 74 x D 258 o。三菱製 MA8149 〜8154の6チップ セット で構成、8φ 7セグメント 赤色放電管。
販売後 7セグメント の「0」表示が 他の数字と比べて「読みにくい」との声があったことから半分の「o」にするよう、タイガー自ら付加回路を作り込み、改造したりした。

1971年発売。
当時の価格は68,000円。










出典) 工房遊次

121RS (タイガー計算器)

DOSパソコンの初期 台湾で多くの中小メーカーが手掛けたように、当時 日本で「四畳半メーカー」と言われた工場で、1973(S43)頃 前型 121R とは別工場でOEMしたものである。

三菱製 1チップ M5867-21B 使用、10φ 蛍光9セグメント、W 212 x H 67 x D 240 o




出典) 工房遊次

DC-08 (タイガー計算器)

ブラザー工業からのOEMによる最初の機種。住友商事が両社のとりまとめを行った。

TI 製 1チップ TMS0105BNC 使用(当時多くのメーカーで採用)8セグメント iToron(伊勢電子)8φ単管











出典) 工房遊次

DC-8S (タイガー計算器)

タイガー計算機より1973年2月に発売されたポケット電卓。

DC-8SAとDC−8SA の 単三X 5電池専用が、ニッカド充電電池(単三X 5 パック)専用機になったもの、8SAと並行販売された。

1973年。
32,500円。








DC-8SA (タイガー計算器)

1973年2月に発売された電卓。同時に DC-8S (32,500円)も発売された。

住友商事の仲介でブラザー社よりタイガー計算機にOEM供給されたもの。

DC-8SAは、当時としては先端的なキーボード機構(軟質シリコンゴムと非接触誘導)を採用しており、単3電池を5本使用た。内部には日立と東芝製のチップが使われている。当時の価格23,700円。



    信和ディジタル

Tallymate (No.1) (Victor Comptomater)

米国シカゴのVictor社から発売された電卓。信和ディジタル社のOEM。
テキサスインスツルメンツ社のワンチップLSI 、TMS-1050を使用している。
日本では1971年、米国では1973年に発売された。

当時ビジコン社から世界初のポケット電卓LE-120Aが発売され話題となったが、LE-120Aは非常に高価だった。
これに対し、同じ年に発売されたTallymate は図体こそ大きかったものの、LE-120A と同様乾電池を使い、価格はLE-120A の半額だったことから大きな人気を博した。

単3電池6本若しくはAC電源使用。



Tallymate (No.2) (Victor Comptomater)

Tallymate (No.1) の色違い。Victor社の色合いを用いている。











    Kobenica

U-TAC TC-8

Tallymate と似た形状の電卓。詳細不明。電卓の左上に記されている "Kobenica" がメーカー名であろうか。電池ボックスのふたには "U-TAC MODEL: TC-8" と書かれている。内部をみると、Tallymate よりはるかに複雑な構造になっていることから Tallymate より若干早い時期のものとみられる。CPU にはテキサスインスツルメント社のチップが用いられ、チップには"TMS0105BNC 7245" と記されている。
Tallymate と同様非常に懐かしさを感じさせるデザインの電卓である。


    シルバー精工 (Silver Reed)

    1952年に「丸越編物機械株式会社」として設立され、1967年に「シルバー精工株式会社」に変更された。
    「シルバー編機」で知られるが、家庭用機器、タイプライターなど事務機器なども製造していた。
    本業の「編み機」や「タイプライター」の市場縮小に伴い業績は慢性的に悪く、2011年1月に東京証券取引所1部上場廃止。

    1974年当時で事務用機械の取扱割合は50%、従業員数2200名で工場は小平市にあった。

SE-8K

1973年に発売されたハンディタイプの8桁電卓。
割引・割増計算、EXキーによる逆数計算、√計算など可能なビジネス向け電卓。

浮動小数点方式。
オーバーフロー表示。
日本製。
22,800円。


Mini W

香港製。





    東興化学工業 (TOKO)

MINI-8 (TD-802D)

東興化学工業から1974年に発売された8桁ワンチップLSI電卓。単3電池4本若しくはアダプター使用。チップは TI 社製。8,900円。

組み立てキット(TD-802DK)が7,500円で発売されていた。

TOKO MINI-8 組立指導書


    東邦通商 (TOHO TSUSHO)

Censor-1

単3電池2本若しくはアダプターで駆動。NEC 社製のチップを使用。サイドから見たデザインがなかなかよい。

ROGER F-6

12桁関数電卓。単3電池2本若しくはアダプターで駆動。
NEC 社製のチップを使用。
日本製だが内部を見るとガムテープで部品を固定するなど非常に雑な作りになっている。





    東京エレクトロン研究所

    電算機周辺機器、半導体製造機器、半導体テスター、音響製品などを取り扱っていた。
    1974年当時従業員数200名、本社は新宿、全国に6つの支店・営業所があった。

mark1 80AD (Tokyo Electron)




    ゼネラル (GENERAL)

    現 富士通ゼネラル社。富士通グループの電子・電気機器メーカー。本社は川崎市。
    1974年当時で従業員は4000名、年間の総売上は466億円あり、そのうち事務用機械の占める割合は13%だった。

    (沿革)
    1936年八尾敬次郎により株式會社八歐(やおう)商店として設立され、蓄音機、ラジオを製造した。
    1946年から 「ゼネラル」の商標使用開始。
    1966年に「ゼネラル」に社名変更
    1968年から電子式卓上計算機の製造をはじめる。
    1976年米国・ニューヨークに「テクニカ社」を創立。
    1984年富士通と資本・業務提携
    1985年10月 株式会社「富士通ゼネラル」に社名変更

    なおゼネラル・エレクトリック(米国)、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(英国)の三社は別の会社で一切無関係はない。

TEKNIKA 1200

ゼネラル社は1968年に最初の電卓を発売しているがこれがそれにあたるかは不明。

185.000円。


→電子科学1970年7月号記事





G-1201

1970年に発売された12桁1メモリー電卓。
138.000円。


日本経済新聞 1970.12.3.





804

初期のポケット電卓。
充電はクレードル上で行う。
保管時には半透明のプラスチックカバーをかぶせる。

シリアルNo.3602。
日本製。







806

海外で販売されたもの。
表面のシールに"TEKNIKA"の文字があることから米国・ニューヨークの「テクニカ社」が販売したものとみられる。
単3電池4本を頭部に装着する。
型番は"EDC-806"。







807

単3電池3本使用。
NEC製CPU使用。
型番は"EDC-807"

812

単3電池3本使用。
赤のLED電卓。




    伊藤忠商事 (C.ITOH)

    1974年のビジネスマシーンズ・イヤーブックによると、リコー、東芝ビジネスマシンなどから事務機械を仕入れ販売していた。

8005

内部をみるとNECの文字とZEBRAの文字が見れる。


SOLAR 8

初期の太陽電池式電卓。
東和サン機電のOEM電卓。
(V-007 と太陽電池パネルの位置は違うがその他は同じ。)

手帳型電卓


    丸紅飯田 (Miida)

    丸紅飯田は日本で生産された電卓をMiidaブランドで海外で販売した。多くの機種はOmron社のOEMとみられる。

8

Omron 80 のOEM 版。
オムロンのCPU、パナソニックの充電池と東芝の半導体を使っている。箱には、"Miida Electronics,Inc. 17 EMPIRE BLVD, S. HACKENSACK, N.J. 07606"の記述がある。(箱自体は日本で印刷されたもの。) シリアルNo.01731249。
Omron 80

三井物産

丸紅飯田が日本で生産された電卓を海外で販売したのに対し三井物産は海外で販売された電卓を日本に輸入し発売した。

8301

米国SOUNDESIGN社が発売した電卓を三井物産電器販売株式会社が輸入し販売した電卓。
ただ電卓自体は日本で製造されたものであり、輸入したものではなく米国SOUNDESIGN社向けの輸出品を国内で販売したものかもっしれない。製造メーカーは不明。

電源スイッチを切り忘れても自動的に電源を切り電池の無駄な消費が避けられる「オートマチック・シャット・オフ回路」を搭載している。
4個の単2電池またはACアダプター使用。
760g
115(W)×190(D)×45(H)mm
22,800円











    チノン (Chinon)

Executron 8M

単2電池4本若しくはACアダプター使用。数字は非常に明るく見やすい。イギリスで販売されていたもの。CPUはNEC製。


    ヤシカ (Yashica)

    カメラメーカー。1973年5月に電卓市場に進出した。
    同社が最初に発売したのは、8桁のハンディタイプの「ヤシカビッキーB800」と充電機能が付いた「同B800L」及びデジタル時計付の「ヤシカAT800」の3機種で、価格はそれぞれ23800円、29800円、49800円だった。

Pickey (B800)

1973年5月20日に発売されたヤシカ最初の電卓。
ポケット型のデザインで新式のノックタッチキーを使っており、かちかちと軽快に反応し押し間違いが少なくなった。
ケースが本の形をしているのが洒落ている。
単三電池4本使用。ACアダプターも使用可。
101(w)×146(D)×31(H)mm。
23,800円。日本製。

同時に、充電機能のついたPickey (B800L) (29,800円) も発売された。



AT-800

1973年6月21日に発売された8桁電卓。
ふたを閉じるとデジタル時計、開くと電卓として使用できるという、変わり種の電卓。

奥行 166×巾 150×高 72mm。
重量 1.7kg。
49,800円。日本製。









    システック (Systek)

    システック社は電卓分野ではかなり先進的な企業であったが、電卓戦争の最中1976年頃、倒産したといわれる。しかし詳細は不明。

mini 8 (Systek)

今では非常に珍しいシステック社の小型電卓。
システック社は電卓分野ではかなり先進的な企業であったが、電卓戦争の最中1976年頃、倒産したといわれる。しかし詳細については不明。このmini 8 は国内ではあまりみかけないが、海外メーカーのOEM製品は多く出回っている。

単4電池3本使用。92×62×22mm。

小型電卓


Lady (Triumph)

Triumph はドイツのメーカー。Adler 社 Royal 社の関連企業。
Lady は女性を意識した金色と赤の色を使った8桁の蛍光管電卓。
Triumph 社は他に男性向けの電卓 Sir を発売している。
システック社のmini 8 のOEM。

CO-OP SR-8 (Systek)

システックが製造し全国大学生活協同組合連合会が発売した科学技術用電子式計算機。
発売時期、価格は不明だが、箱にあるシールから23,800円程度だったと推測される。

オンオフスイッチは頭の部分にある。
単三電池4本使用。









    無電テレビ工業 (Muden televi)

    名古屋市にあるTV受信アンテナ、トランシーバーなどを製造する会社。
    同社は電子式卓上計算機「エレタック8」()を発売し、電卓分野に進出した。


Photo courtesy :Mr.Toshiro Hata

ELETAC 8

1972年11月に無電テレビ工業が最初に発売した電卓。
19,500円。


ELETAC 10 (MUDEN)

「時代の先端を行くアメリカ・カーデザインのカーブをとり入れた優美なボディーライン」が特徴の電卓。

TI社製ワンチップMOS-LSIを使用。
230(W)×70(H)×180(D)mm。1.2kg。

23,500円。


→ スペースエージデザインデスクトップ電卓

エレタック10
MOS-LSI仕様の10桁電卓。
23,500円。
<裏面>






ELETAC mini DELUXE

ポケットサイズ MOS-LSI電卓。
ストラップが本体上部中央についている。ボタンは真四角、本体は優雅な曲線のレトロなデザインの電卓である。
単3電池4本使用。
4,500円。
76(W)×132(D)×30(H)mm。

エレタック ポケット電卓
エレタック ポケット8標準機4,000円
エレタック ミニ デラックス√x、%、π、±4,500円
エレタック ミニ メモリーメモリー計算5,000円





ELETAC mini memory

ELETAC mini DELUXE にメモリー機能が付いたもの。

単3電池4本使用。
5,000円。

76(W)×132(D)×30(H)mm。



    タマヤ計測システム (TAMAYA TECHNICS INC.)

    江戸時代の初期[1975年)に創業された老舗の企業。
    当初は「玉屋」の称号で眼鏡販売を手がけていたが、正しい焦点距離を保つ技術の蓄積を生かし扱う分野が眼鏡から計測器へとシフトしていった。
    電卓の高機能化、複合化が進む中で、同社はシャープと協力して航法計算機能付き電卓を発売した。
    同社は、現在もセイコーエプソンの100%持株会社として計測機器の販売を続けている。

NC-77

1978年に発売され91年まで販売された航法計算(Navigation)機能付き電卓。
精密な計測を行う用具として内部にフェルトを施した木箱に入れて販売された。
本体はシャープが製造した。

同社からはこのシリーズとして、NC-2、NC-88、NC-99、NC-2000が発売されている。

関数電卓





    長崎屋 (Sunbird)

    当時はスーパーも自社ブランドで電卓を発売した。
    他にダイエーも自社ブランドの電卓を発売している。

NC6-911

6桁表示だが矢印キーを押すことで計算結果は12桁まで表示できる。
ON-OFFキーは頭の部分に付いている。
単3電池4本またはACアダプター使用。

Sunbird

裏面にうっすらとDT8M914の文字がみられる。シリアルNo.000985。
内部は単純な構造になっており、”GICO49.8.24."のシールが貼ってあることから1974年製であることがわかる。



    太陽ビジネスマシン (GLORIA)

    太陽ビジネスマシン社は、千代田区神田に本社を持ち大宮市に工場を持っていた。1974年当時の従業員数は48名で計・加算機・電卓、レジスター、エアーポットの部品などを製造していた。
    GLORIA は太陽ビジネスマシン社が発売した電卓のブランド名。

LM-8

GLORIA LM-8は水平タイプの電卓。
充電式で充電池4本を内臓している。



    キング工業


キコム KD-121C


→電子科学1970年7月号記事



    KENKO

KK-F95

関数電卓。
中国製。



    Bandai

Astrostar

バンダイがKosmos社のライセンスで製造販売した星占いコンピュータ。Astro と比べ一回り大きく、キーの形などは異なるが、キーの配置等基本的な部分は同じ。











    SATEK

800PK

SATEKというメーカー(?)が発売した電卓。
日本製。